海老沢祐次さん(2014年7月)
海老沢祐次(えびさわ ゆうじ)さん
これからの地域福祉で目指したいことを話し合う場の地域福祉活動計画等推進委員会に関わっていただいている社会福祉法人県央福祉会 常務理事の海老沢祐次さん。
「今後取り組みたいことは、福祉教育を通して障害のある方は「生きがい」を、子どもたちは「発見、共感、行動」をともにつくっていきたいです。」
福祉に関心をもったきっかけは何ですか?
高校2年生の夏休みに塾に通う途中の電車内で、高齢者の方が目の前にいたとき、恥ずかしくて席を譲れなかった自分はどうしようもない人間だと思い落ち込みました。後日、席を譲る時の言葉を考えて、やっと「どうぞ」の一言で譲ることができたんです。相手の方から「ありがとう」と何度も言われたことが嬉しくて、それからは席を譲れるように遠回りをして始発の駅から乗るようにしていました。当時は「世界最高の高校生」と自負するくらいでしたよ(笑)
福祉系の大学時代、印象的だったことは?
福祉系大学に進学し、周りの同級生から聞く人生の話と自分の人生にギャップを感じ、自分には実体験が少ないと感じていた頃、友人からボランティアに誘われました。活動先は重度心身障害者の施設で自分には衝撃が強く、自分から接することもできず固まってしまいました。自分に福祉は無理だと感じ、辞めようとまで思っていたが、再度活動に誘われて断り切れず施設に行きました。
そのとき、利用者の方が文字盤を使って平仮名の練習をしているのかな?と思っていたとき、自分のことを覚えていてくれて「えびさわ」と文字盤を指してくれたことがすごく嬉しくて泣いてしまいました。たったそれだけの出来事ですが、自分にとってはその人が「頑張れ、お前もやればできる」と伝えてくれたように感じました。その経験をきっかけに、利用者の生き様から職員は学ぶ「ギブアンドテイク」の心を今でも大切にしています。
現在、地域福祉活動計画等推進委員会(以下、委員会)に携わっていかがですか?
「障害福祉の立場からの意見を言わないと」と感じているので毎回緊張する委員会ですね。これまでの話し合いで印象的だったのは、今年の大雪のときに、近隣同士で雪かきを助け合い、自然と会話も生まれたということから「地域力はまだまだある」と気づきました。
プライベートでは子どもたちにドッヂボールの指導もされていたようですが?
自分の子どもが習っていたので、お世話になる監督やコーチに挨拶をしに行った時に、小学生からボールを投げてと頼まれました。その時に面白がって色々相手をしていたら「来週も来て!」と言われ、気づいたら監督になっていました…(笑)
それまで、平日は仕事ばかりで地域とのつながりがなかったので、地域での自分の役割ができたことが嬉しかったです。現代社会では物事に一生懸命取り組むことを笑うような風潮がありますが、地域の中で子どもたちを中心に人が集ったり、一生懸命何かに取り組むことに意味はあると思います。現在は子どもたちの人数が少なくなり、休止中ですが、関わった子どもたちが成長して街中で向こうから話しかけてくれることも嬉しいですね。
今後、仕事の中で実現したいことは?
現在、自分が勤めている施設には身体障害のある方が通所しています。その方たちが市社協の「ハンディキャップ体験講座」で子どもたちに話をする講師をできればと考えています。福祉教育、特に障害に対しては「知らないから怖い」という感情があると思います。しかし、学校の身近にある施設に通所している人と出会うことで「怖くない」と気づき、新たな視点を「発見」し、相手の喜びは自分の喜びであることに「共感」する。そして自分には何ができるのだろうと考え「行動」することが福祉教育だと思います。
また、利用者の方の中には病気や事故で障害を負い、自分の人生なんて…と悲観的になる方もいらっしゃいます。そんなとき、子どもたちに自分のことを話すことをきっかけに自分の人生を振り返ることができ、子どもたちに教えることが生きがいになると思います。当事者も子どもたちも主体性をもって学べる福祉教育に携わりたいですね。
インタビューを終えて
インタビュー同様、委員会でも仕事での実践経験やご自身の体験をもとに発言をされる海老沢さん。熱く語るだけではなく、他の委員さんがくすっと思わず笑ってしまうようなエピソードも添えて固い会議の場を和ましてくれることもあります。
お話にもあった福祉教育、ぜひ市社協と一緒に取り組んでいきましょう!