船橋 芳夫(ふなばし よしお)さん
昭和10年 相模原市藤野町吉野生まれ。
長きにわたり、教壇に立たれて、教師を退職された後、社協からの「高齢者等へのお手伝いグループを作りませんか。」と言う呼びかけを契機に、ボランティアグループ「ふじのおたすけ会」を立ち上げ、発足から5年を迎えようとしていますが、今も会長として会の活動を支えています。
現在は、藤野町内の小学校で読み聞かせグループの活動にも参加され、子どもから高齢者まで多くの方とふれあいながら活動しています。
子どもの頃に父親から「お前の生まれた頃は、戦前の大変な時代だった。」と言われながら育ちました。
小学生時代は、終戦後の物資不足による困窮した生活の中で、平和の大切さをしみじみと感じました。やがて、中学生になりその頃から名作と言われる本に飛びついて読むようになりました。
ある教育関連の本に、「白いキャンバスのような子どもに何をどう教えるか。」と言う一説があり、大変感銘を受けました。また、人生の喜怒哀楽を顔のしわに刻み込んではいても、それを面に出さない老人の知恵など、多くの物語を読むことで知りました。この当時読んだ本から学んだひとつひとつの事柄が、現在の私の生き方の原点になっているように思います。
「読み聞かせ」と「ふじのおたすけ会」の活動を始めたきっかけは?
どちらかというと人付き合いが苦手なので、わたしがボランティア活動の話をすると、元職場の同僚や教え子の親たちは驚きます。このような生まれ持った性格は一朝一夕に変えることは出来ませんが、6年ほど前に思い切って朗読の講座を受けたのが、地域にデビューのきっかけでした。
受講後は、講座を受けた方々との月一回の練習を中心に活動していると、地元の小学校から「月二回1、2年生に本を読んでくれませんか。」との要請があり、それを機に読み聞かせに本格的に取り組むようになりました。
また、当時、社協が広報で「お年寄りの日常生活のお手伝いをするボランティアグループを作りませんか。」という呼びかけをしていました。その頃、私自身が地域に役立ちたいと考えていたのが、高齢者宅の庭木の手入れや庭の除草などをするグループ作りだったので、早速、社協の担当者のアドバイスをもらいながら、賛同する仲間と共に立ち上げたのが「ふじのおたすけ会」です。
現在、絵本の読み聞かせに伺っている藤野小学校は、平成20年度に学校統合したばかりなので、私自身と子どもたちとの交流は十分とは言えませんが、数多くの図書の中から物語を選ぶ楽しさには格別なものがあります。
特に、小学校での絵本の読み聞かせの場合は、主に1、2年生が対象なので物語の内容だけではなく、それぞれのページに描かれた絵が子どもたちにどう映るか、物語と絵と私の読み方が上手くかみあうかなどと、創意工夫する時間を持てることは本当に嬉しくもあり、ありがたいことだと思っています。そして、自分が選んだ物語や絵本が子どもたちの心をとらえて、喜びや悲しみや嬉しさ、時には新しい知識が子どもたちに吸収されていく瞬間を感じる時は、何事にも代えがたい至福の時であります。しかし、常に満点とはいかず、悩んだり、試行錯誤する日々を過ごすことがあります。そんな時は、まず子どもたちからの手紙や感想文を読み直して、聞き手の子どもたちがどう感じて、どう受け止めているかを知るようにしています。
読み聞かせは15分間の演技ですから、楽しい反面厳しさがありますが、孫のような子どもたちと同じ時間を共有できる喜びに浸っています。
一方、「ふじのおたすけ会」ですが、平成16年5月に設立したボランティアグループです。現在23名の会員で藤野町内の70歳以上の高齢者や障害者宅の庭木の剪定や除草などをしています。設立5年を迎えて会員の高齢化が進んで、盛夏や厳冬期の依頼はお断りしていますが、年々依頼が増えているのが現状です。
「まあ、綺麗にしてもらえて」とか「こんな時に誰かお客さんが来てくれれば」などと喜びや感謝の声をかけられると、私自身が嬉しくなって「助けられるのは、むしろ私の方ですよ。」と言いたくなります。
「読み聞かせ」も「ふじのおたすけ会」の活動も、人と人との関わりの中で生まれ育まれる点では一致しますが、日常の活動は全く異なりますので、二つの活動を分けてお話します。
まず「読み聞かせ」ですが、しっかりした組織があり、スタッフも若いお母さん方からベテランの方まで、約30名の方々で構成されています。そこで私は「聞き手に伝わる読み方」や「自分自身が楽しめる読み方」を習得しました。これからは、朗読や読み聞かせを楽しむ人が増えることを願いながら、活動に参加していきたいと思っています。そして、どの家庭でも読み聞かせの声が聞こえるようになることを願っています。
「ふじのおたすけ会」への高齢者(70歳以上)からの依頼は、年々増加して平成20年度は12月末で54件を超えました。このことは、地域に根ざし信頼されている証です。また、活動の担い手を増やすため、社協と協働しながら少しでも若い世代の会員の発掘をしていきたいと思います。
また、今後とも活動を通じ「自分自身も助けられている。」との思いを胸にフットワークの軽いボランティアグループを目指して行きたいと思います。
~子どもたちが語り手の話に聞き入っています。(ふじの幼稚園)~ |