「中國料理ビストロプータン」
南区相模大野6-6-1 南区役所近く
行幸道路沿い
江幡 美智男(えばた みちお)さん
昭和31年、相模原市生まれ。プータン招待事業…平成元年より21年間、ほぼ毎月市内の障害者施設の利用者(1回15~20人)をご自身が経営する中國料理店に招待し、自ら腕を振るった中國料理を楽しんでいただくため昼食を提供されています。平成4年度の市社協第23回社会福祉大会、平成6年度の市社協第25回社会福祉大会にて「地域福祉の向上」の功績により表彰されました。
招待事業を始めることになったきっかけは、何ですか。
振り返れば、自分の出生時に鉗子(かんし)分娩で右目に影響が出てしまったことや、高校卒業後に友達とふたり住み込みで料理人として修行する中で、「店が持てたら親のない子ども達に食事提供ができたらいいね」と話し合っていたことなどが思い起こされ、今までいろいろな方にめぐり合い、助けられ、生きていて良かったと思ったことがきっかけになっています。
念願が叶い30歳の時、現在の店を持ち、2年ほどは年中無休で資金回収のため頑張りましたが、4年目から定休日を設けたのを機に、長年、心の中に温めていた招待事業を始めようと思いました。招待者については、当初、児童養護施設などに出向いての食事の提供を考えていましたが思いのほか手間がかかるため、お客さんとして来店された市職員から市社協南事務所を紹介され、調整をお願いするようになりました。感謝の気持ちから行っていることですが、お金を寄付することより自分のできることで喜んでもらえるのが嬉しいですね。
どのように実施していますか。
毎月第1日曜日の定休日の午前11時30分頃、招待した障害者施設の利用者さんたちが来店されます。メニューの基本は3品。八宝菜や唐揚げ、エビチリなどと最後はチャーハンか焼きそばといったコースです。お昼前から調理にかかり、出来立ての料理をお出ししています。皆さんは昼食を召し上がりながら歓談してお帰りになります。固形物を食べることのできない方のために親御さんがミキサーを持ち込まれたりしているのを見て、身体の状況に合わせて食べやすい豆腐料理にしたり、体格がいい方には大盛りにしてボリュームを出したりと工夫しています。皆さん食欲旺盛で、本当においしそうに召し上がって下さいます。
招待事業を通じて感じること、嬉しかったこと、大変だったことについて教えてください。
21年間で、30施設以上の利用者さんとの出会いがありました。同じ方と久しぶりに顔を合わせ、成長が垣間見えたりするのは嬉しいものです。時には、作業所で作られた作品やお礼の手紙をいただいたりしますが、全部とってありますよ。私自身この事業を通じ障害者を取り巻く社会環境などについての理解が深まりました。障害者の作業所で頑張って仕事をしている利用者さんの賃金が少ないという話を聞きました。やりがいが感じられるようお給料を増やしてあげればいいのにと思いますね。また、甥たちに高校生の頃から招待事業の日には手伝わせていましたが、その中の一人は福祉系の大学に進学し、現在は介護関連の仕事に就いています。親の苦労や自分の置かれている状況の認識、将来を考えるうえで役に立ったのかなと思います。
長年にわたり続けられていますが、長続きの秘訣は何ですか。
不況により昼食は弁当の人が増えたりしてお客が減り、お店にとっては厳しいこともあります。若い頃は勢いで一生懸命修行しました。その成果で今も仕事を続けられるのはありがたいことと思い、感謝の気持ちを持って招待事業を続けています、これからも自分に出来ることをするだけです。
今後の抱負をお聞かせください。
まだお越しいただいたことのない施設の方も招待させていただきたいので、市社協南事務所に調整をお願いしたいと思います。緑区内の施設の方にもドライブがてら来てほしいですね。腕によりをかけて調理します。
店名「プータン」は、知り合いのお子さんが愛読していた仔豚の絵本「プータンシリーズ」が由来。今年改装した店内は、白を基調に明るくきれいに生まれ変わり、厨房からは下ごしらえのいい匂いが漂っていました。江幡さんは、南市民ホールで開催した演劇の俳優さんが来店されたことをきっかけに、市演劇鑑賞会のメンバーになり、ミュージカルや演劇など様々なジャンルの舞台を楽しんでいるそうです。
初対面でもすぐに打ち解けられるおおらかな笑顔と、明るい口調が印象的な江幡さん。きっとお料理に込められた気持ちが「プータンの味」の大事な隠し味なのでしょう。店長お勧めメニューは五目焼きそば、唐辛子そばです。ぜひ、お立ち寄りください。