河本 徳一(かわもと のりかず)さん
昭和20年生まれ、東京都町田市出身。
昭和39年相模原市内に移住。
昭和45年から市社会福祉協議会を通して少年院への図書代を寄付される。
平成元年には、永年にわたり継続して金品を寄託されたとして市社会福祉協議会の特別表彰を受賞される。
少年院の図書代をご寄付されたきっかけを教えてください。
施設管理の仕事をしているときに、年2回程少年院に施設内の草刈りをお願いしていました。院生が、いつも一生懸命働いていたので、何かお礼ができたらと思っていたところ、ある日、先生・院生とお話しする機会があって、院内に本が不足して、読みたい本があっても読めない状況にあるという話しを聞きました。そこで、自分が今できることをと思い、給料がでるたびに図書代を寄付することに決めました。
院生とのエピソードがあれば教えてください。
決められたプログラムがある院生に迷惑をかけたくないので、寄付を始める以前から、少年院に行くことはあまりしていませんが、感謝の手紙や写真がその都度送られてきています。ある少年院では、「河本文庫」という書庫まであって本当にありがたいです。
また、本の中身については、好きなときに好きなものを読んでいただきたいので、小説だろうが、漫画であろうが、少年院が何を購入してもいいように伝えています。
ご寄付に関して、ご家族の反応はいかがでしょうか。
寄付をしたきっかけにもなるのですが、父親から「人は一人で仕事をしているのではない。何かあれば人に手を貸すことを忘れるな」と教えられてきました。その言葉がいつも頭の中にあって、寄付を始めてからいくつかの困難はありましたが、今でも続けられているのは父親のその教訓があったからだと思っています。ただ、寄付は自慢することではないので、妻や子どもを含め、あまり他の方々に話しはしていません。
昭和45年から40年以上ご寄付されて、平成元年には市社協でも特別表彰を受賞していますね。
寄付を始めた当初は、表彰の対象にあがったら、自分の席を一人でも他の人に譲りたいと辞退していましたが、ある日、突然、少年院から賞状が届けられたことがありました。それを両親に見せたらすごく喜んでくれて。それから、両親を含め周りが喜ぶならば表彰を受けることにしています。その出来事以来、賞状は実家に飾っています。
河本さん自身、ご寄付に関してのお考えがあれば教えてください。
寄付する側の動機やきっかけよりむしろ、寄付金が大切に使われていることが大事だと思っています。寄付をすることによって喜んでくれる人やたすかったと言ってくれる人がいるならば少しでも支援していきたいです。
今後についてはいかがお考えでしょうか。
寄付をライフワークにしている人もいますが、私は、ライフワークというよりむしろ、社会に対して月々払わなければいけないローンのようなものだと思っているので、あまり難しく考えず、この寄付を続けていきたいと思っています。
永い間、ほぼ毎月、市社協の事務所にお越しいただき、ご寄付をしてくださる河本さん。ご寄付いただいた回数は500回を超え、職員はもちろんボランティアにも顔なじみが多く、インタビュー終了後もたくさんの方と楽しそうにお話しをされていました。
これだけ永く続けられているのは、お父様の教えもさることながら、その人柄と常日頃から人に対する思いやりを持ち続けていることからだとインタビューをしていて感じました。