菊井 康之(きくい やすゆき)さん
南台在住。書道講師
70歳の時にあじさい大学書道科を受講し、その後「書」の奥深さにひかれ、現在あじさい大学OBによって構成される7グループ(総勢100人)で書道を教えています。
あじさい会館では、毎年「年始の言葉」を書いて頂き、正面玄関に飾っています。
菊井さんにとって「書道」とは??
そうですね、書にはかな文字、漢字文字が関係しますよね。漢字の一文字一文字には紀元前の中国に遡った成り立ちがあり、意味があります。
たとえば、皆さんもご存じの「山」という文字。実は山々の姿から成り立っているんです。「川」という文字も川の流れから成り立っています。日本でも古くは動物の骨に刻まれた文字、木簡が発掘されています。かな文字は日本固有の文字で、奈良時代に漢字から草書体から独立して成り立ったことなど、古代の息吹を感じます。そうして受け継がれてきた文字を書くという誇りが持てるんです。
現代は文字を書くということが少なくなっていますが、どう感じますか。
最近では、パソコンや携帯のメールなど電子機器の普及によって、文字を書く機会が減っていますよね。当然、文字に込められた意味を考える機会も減っていると思います。ボタンを押せば文字や漢字に変換され、文字を選んでしまう。それでは文字を考えるという行為が減ってしまうと思います。当然そこには感情も少なくなってしまいますよね。昔、ラブレターを書く時、どんな言葉を書いたら自分の想いが彼女に通じるかと色々な言葉を考えたわけです。そして相手からどんな返事がくるんだろうかと、ワクワクどきどきした気分があったのではないでしょうか。
今では、表示された言葉を文章にしてポンとメールを送信して終わってしまいます。
何か日本人が持つ『心』がなくなってしまったな・・・という思いがあります。
これからの人たちに一言ありますか。
特に子供たちには、文字の成り立ちに興味を持ってほしいと思います。高校時代までは国語の時間で書道を学ぶ機会がありますが、高校卒業以降は書道を学ぶ機会が減ってしまいます。大学でも書道を学ぶ講座は、仏教系が中心となり数が少ないのが現状です。
現代の社会は、速さを求めるため、文字を書くということをあまり要求しなくなりました。
そうした中で「書」を通して心安らぎ、ほっとする時間、精神的な修行とする時間として書道を楽しんでほしいと思います。